水曜日, 5月 06, 2009

君子は豹変するのだ

 2006年11月24日「DNSBLの利用価値はあるか?」で「DNSBLを使う積極的な理由は見出せない」と述べてから2年5ヶ月たってそろそろ舌の根が乾いた今、SPAMCOPの併用実験を開始した。S25Rをすり抜けるスパムをDNSBLでブロックできる率について、ある程度定量的なデータが得られたからである。
 「DNSBLの利用価値はあるか?」の記事では、「S25Rの偽陽性を減らすためにDNSBLを併用すると、阻止率はかなり下がってしまうのではないか」と述べた。これは正しかった。ウェブで見つけた証言によると、SPAMCOPによる阻止率は50~60%程度。DNSBLの応用であるトレンドマイクロのEmailレピュテーション70%程度。阻止率はその程度に下がってしまい、S25R方式の高い防御力が無駄になってしまう。
 一方、「阻止率を上げるためにS25RにDNSBLを併用しても、阻止率が大きく向上することはないだろう」と述べた。確かに大きく向上するとは言えないが、98.8%の阻止率はSPAMCOPの併用で99.2%程度に上がるという見積もりが得られた。「むしろ偽陽性が増えるおそれがある」とも述べたが、それはあまり心配しなくてよさそうである。蹴る時の応答コードを「450」に設定して再送要求すれば、偽陽性からの救済はS25R方式の運用と同じ手順でできる。4月29日にSPAMCOPの併用を設定してから5月6日までに、S25Rをすり抜けたホスト4個のうち、SPAMCOPで阻止されたホストは3個。その中にリトライしたものはなく、偽陽性判定はまだ起こっていない。SPAMCOPはそこそこ役に立っていると言える。
 私の場合、S25Rをすり抜けて着信するスパムは一日平均1通もなく、スパムを捨てる手間はまったく問題になっていない。だから、スパムの受信を減らすためにこれ以上がんばる必要はない。ただ、S25R方式で99%近いスパムを阻止できてもなおスパムの受信が多い人にノウハウが役立つかもしれないと思って、SPAMCOPの併用実験をやっている。
 正当なメールをエラーリターンさせる副作用ゆえに「DNSBLを使ってはいけない」という主張もあるが、物は使いようである。多少とも効果があり、副作用を克服できるなら、使えばよいと思う。副作用を克服するには、S25Rと同じくDNSBLによるブロックでも再送要求を返し、ログを監視して、リトライするメールサーバをホワイトリストで救済すればよい。それが、S25R方式と同じく、スキルの高くない人でも容易に実装・運用できる方法である。知識だけであれこれ言うのでなく、知恵を働かせればよい。
 抗がん剤にはがん細胞だけでなく正常細胞も殺す副作用があるが、だからといって抗がん剤を使ってはいけないなどとは言っていられない。知恵を働かせて副作用を克服できるならば、治療に有効な抗がん剤は使うべきである。それと同じことである。

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