金曜日, 6月 06, 2008

メーリングリストはOptPlusの鬼門

 もういいかげんOptPlus批判はやめようかとも思っていたのだが、バウンシングバック認証方式の問題点に次から次へと気付いてしまうので、やはり書いておくことにする。
 バウンシングバック認証方式反対キャンペーンの最初の記事である2007年5月14日「バウンシングバック認証という無茶なやり方」では、
「なぜ無茶か。メーリングリストや、メールマガジンや、オンラインショッピングの確認メールのことをちゃんと考えているとは思えないからである。」
と書いた。しかし、これは誤りだった。バウンシングバック認証にかけないように登録したエクスパンションアドレスという別アドレスで受信する方法が用意されている。
 ただ、メーリングリストが、登録要求メールを送るとそのFromヘッダのアドレスへ登録確認要求メール(「本当にあなたが登録要求を送ったのであれば、確認のためのメールを再度送ってください」と案内するメール)が自動返送されるという仕組みである場合、それをバウンシングバック認証にかけずに受信するために、Fromヘッダのアドレスをエクスパンションアドレスに変えて登録要求メールを送る必要がある。これは面倒なことである。そのことを2007年5月27日「バウンシングバック認証はやはりやっかい」に書いた。
 今回述べるのは、問題はそのような面倒さにとどまらず、「OptPlusユーザーがメーリングリストに参加することでスパムがバウンシングバック認証をすり抜けるリスクがある」ということである。「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話だが、考えていくとちゃんとそういう結論になる。

 まず、Fromヘッダのアドレスをエクスパンションアドレスに変えて登録要求メールを送ったとする。その理由は、上述のように、自動返送される登録確認要求メールをバウンシングバック認証にかけずに受信するためということにしておく(別の理由もあるのだが、それについては後述する)。
 そして、登録確認要求メールの指示に従って登録手続きが完了したとする。登録されたアドレスは、OptPlusユーザーの通常のアドレスではなく、エクスパンションアドレスである。
 こうなると、メーリングリストに投稿する時には毎回Fromヘッダをエクスパンションアドレスに設定しなければならない。なぜなら、たいていのメーリングリストでは、部外者からの不正な投稿を防ぐために、登録されたアドレスでしか投稿を受け付けないようになっているからである。
 つまり、そのOptPlusユーザーが投稿メールのFromヘッダによってメーリングリストメンバーに公開するアドレスは、通常のアドレスではなく、エクスパンションアドレスになる。
 さて、ここで、そのメーリングリストのメンバーの誰かのPCがウィルス感染して(あるいはスパイウェアによって)、メーリングリストで配信されたメールから拾い出されたメールアドレスがスパマーに漏洩したとしよう。そうなると、スパマーはOptPlusユーザーのエクスパンションアドレスに向けてスパムを送ってくる。そのスパムは、バウンシングバック認証にかからずに通過する。つまり、エクスパンションアドレスでメーリングリストに参加することで、スパムがバウンシングバック認証をすり抜けて着信するということになるのである。
 「スパムを1通でも受けたら返金します」と豪語しているOpt Plus ASPは、このような場合に返金してくれるだろうか。おそらく返金に応じてはくれないだろう。「エクスパンションアドレスを他人に広く公開したユーザーに責任がある」と言うだろう。そうせざるを得ない仕組みであるにもかかわらず。

 では、通常のアドレスでメーリングリストに参加したらどうだろうか。自動返送される登録確認要求メールに対してバウンシングバック認証要求メールが自動返送される。それがメーリングリスト管理者に迷惑になるという問題はさておき、OptPlusユーザーが登録確認要求メールをペンディングキューから救済すれば、登録手続きを完了することができる。
 その後、いろんな人がメーリングリストに投稿したメールが配信されてくる。それがまたバウンシングバック認証にかけられる。
 ここで、メールをペンディングキューから救済した時にホワイトリスト登録されるのが、MAIL FROMコマンドで通知される送信者アドレスなのか、Fromヘッダのアドレスなのかが問題になる。個人がメーラーで送信するメールでは両者は同じである。しかし、メーリングリストで配信されるメールの場合は、Fromヘッダは投稿者のアドレスのままだが、送信者アドレスは、「owner-メーリングリスト名」、「メーリングリスト名-admin」などのような、メーリングリスト管理者のエイリアスに書き換えられる(これはエラーバウンスの返送先になる)。
 ホワイトリスト登録されるのが送信者アドレスであれば、問題はさほど大きくない。バウンシングバック認証要求メールがメーリングリスト管理者へ飛ぶが、いったんペンディングキューから救済すれば、その後は、そのメーリングリストで配信されたメールは、誰が投稿したものであっても受信できるようになる。
 ところが、ホワイトリスト登録されるのがFromヘッダのアドレスだとしたら大変である。すべての投稿者にバウンシングバック認証要求メールが飛ぶことになる。それを受けた投稿者は、「私はメーリングリストに投稿したのであって、あなた個人のことは知らない。メールを疑うなら勝手にしろ」と思ってバウンシングバック認証に応じない可能性が高い。OptPlusユーザーは、いろんな投稿者からの投稿メールをいちいちペンディングキューから救済しなければならない。
 あらかじめメーリングリストのメンバー全員のアドレスをホワイトリスト登録するのは大変である。第一、登録メンバーのアドレスリストは重要な個人情報である。メーリングリスト管理者がおいそれと開示するわけがない(たとえば同窓会のような、メンバーの限定されたメーリングリストならともかく、誰でも参加できるオープンなメーリングリストでは)。
 というわけで、結局のところ、OptPlusがFromヘッダのアドレスをホワイトリスト登録する仕組みであれば、メーリングリストにはエクスパンションアドレスで参加せざるを得ないということになるのである。

 OptPlusユーザーがメーリングリストに参加しようとすると、これほどまでにやっかいで、しかも、エクスパンションアドレスが漏洩してスパムを受けてしまうリスクがあるのである。それでもOptPlusを買いますか?
 S25R方式を知らずにこの記事にたどり着いた人のために説明しておくと、S25R方式とは、送信元IPアドレスの逆引き結果から送信元をエンドユーザーコンピュータと推定した場合に再送要求を返して受信を拒否することにより、ボットからの再送しないスパムアクセスを阻止する(メールサーバを誤判定した場合は再送アクセスが来るので、ホワイトリストで救済する)という単純な方法。Postfixの設定だけで実現でき、97~99%のスパムを阻止できる。メーリングリストへの参加だろうと何だろうと、ユーザーにとってメールの送受信方法は対策前と何も変わらない。

(OptPlusとバウンシングバック認証方式に関するすべての記事へのリンクはこちらの記事にあります。)

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