日曜日, 2月 24, 2008

逆引き命名法を標準化すれば

 もしメールサーバとエンドユーザー回線をはっきりと区別できる逆引き命名法が標準化されて全サイトがそれを守るようになれば、S25Rによる判定は確実なものになり、ボットからのスパムを完全に遮断できるようになる。
 今のS25R方式では、逆引き名からエンドユーザー回線と推定しても応答コード「5xx」で拒否してはならない。それは、逆引き命名法が標準化されていなくて、判定が不確実だからである。「4xx」を返して、リトライがあれば、メールサーバである可能性が高いから、アクセスを受け入れる必要がある。そのため、リトライするスパムを受け入れてしまうおそれがある。しかし、逆引き命名法が標準化されてすべてのサイトでそれが守られ、逆引き名から確実にエンドユーザー回線だとわかるようになれば、「5xx」で拒否してよいようになる。だから、スパマーは、ボットにリトライさせて受信側のメールシステム管理者あるいはグレイリスティングを欺くという戦略はとれなくなる。
 なお、すべてのサイトで逆引きが設定されるようになっても、逆引きできない時の拒否応答コードは「4xx」でなければならない。逆引きが設定されていても、受信側でDNS検索が一時的に失敗することがあるからである。しかし、何度かリトライを受けるうちに逆引きは成功する。それまでリトライは放置してよい。そして、逆引きが成功したら、送信元がメールサーバかエンドユーザー回線かを確実に判別できることになる。
 つまり、逆引き命名法が標準化されれば、受信側メールサーバは、送信側メールサーバからのSMTPアクセスだけを受け入れ、エンドユーザーコンピュータからのSMTPアクセスを確実に遮断することができる。S25R方式は、メールルートの秩序(送信側MUAから送信側MTAへの投函、送信側MTAから受信側MTAへの転送というルートをとらなければならないこと、また、送信側MUAから受信側MTAへの直接の投函は禁止されること)を強制するゆるぎない手段となる。もはやスパム送信にボットは使えなくなる。
 ところで、ISPが機械的に逆引き名を割り当てるエンドユーザー回線を使ったメールサーバはどうするのかと疑問を持つ人がいるかもしれない。そういうメールサーバには、ISPが、顧客の希望する逆引き名を設定してあげるサービスを提供すればよい。
 このような状況が実現したら、スパマーがスパムを送信するには、ISPのメールサーバを経由させるか、自分でIPアドレスとドメインを取ってスパム送信用のメールサーバを立てるしかなくなる。メールサーバを経由するスパムは、メールサーバでの流量制限、および内容検査による送信保留によって抑制することができる(2月3日「S25Rが不要になる時」参照)。また、スパム送信用サーバは、やがて多くのサイトでブラックリスト登録されるだろうから、スパマーはそれを長く使い続けることができない。逆引き命名法の標準化は、スパム配信ビジネスを破綻させることができるだろう。
 S25R方式の効果を実感している人には、この構想は理解していただけるだろうと思う。しかし、そうでない人にはわかりにくいだろう。すべてのサイトで逆引きを設定し、その逆引き名は、サーバかエンドユーザー回線かを判別できるためのルールに従ったものにする。たったこれだけのことでスパマーを袋小路に追い詰めることができるとは、S25R方式を知らない人には容易には信じてもらえないだろう。
 今、SPFの設定が広まりつつあるが、すでにスパマーはその裏をかいている。大多数のサイトでSPFが設定されたころには、受信側でのスパム対策のためにはSPFはさほど効果的でないことが認識されることになるだろう。そのころになってようやく、送信元の逆引き名を手がかりにする方法が注目され、逆引き命名法の標準化が議論されるようになるのかもしれない。
 次の記事で、逆引き命名法の標準化の案を述べる。

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